FOLKLORE ENCYCLOPEDIA

伝承事典

神々、土地神、妖怪、怪異。名と土地、異説と典拠を横断して探す。

64件の異聞

山道の上空を飛び、旅人を導く黒い烏の幻想的なイラスト
精霊 ・和歌山県

八咫烏

八咫烏やたがらすは、神武天皇じんむてんのうの東征譚で道案内をする烏です。原典では天つ神が遣わし、熊野くまのから大和やまとへ向かう一行を導く役割として描かれます。

杉木立と霧に包まれた山中に現れる九つの頭を持つ龍の幻想的なイラスト
土地神 ・長野県

戸隠の九頭龍

戸隠とがくしの九頭龍くずりゅうは、江戸時代の『武江年表ぶこうねんぴょう』に「信州戸隠明神九頭龍権現しんしゅうとがくしみょうじんくずりゅうごんげん」として現れます。本記事では、神社の解説ではなく、国立国会図書館デジタルコレクションで公開される記録に範囲を限って紹介します。

月夜の山城を背景に、赤い衣をまとった鬼の首領を描いた幻想的なイラスト
妖怪 ・京都府

酒呑童子

酒呑童子しゅてんどうじは、大江山おおえやまに住む鬼の首領として語られる存在です。ここでは楠山正雄くすやままさお『大江山』に見られる再話さいわの筋立てをもとに、源頼光みなもとのよりみつらとの対決譚として紹介します。

天照大神のオリジナルイメージ
神 ・三重県

天照大神

アマテラスオオミカミ

高天原たかまがはらを治める日の神。古事記こじきではイザナギの禊みそぎから生まれ、岩戸隠れいわとがくれや国譲りくにゆずりの物語に現れる。

月夜の海から現れる、長い髪と魚のようなうろこを持つアマビエを題材にした幻想画
妖怪 ・熊本県

アマビエ

アマビエ

アマビエは、江戸時代の資料『肥後国海中の怪ひごのくにかいちゅうのかい』に現れる海の怪です。肥後国ひごのくにの海から現れ、これからの豊作と病の流行を告げ、人びとに自分の姿を写して見せるよう求めたと記されます。

阿摩美久が土と草木から海上に島を築く伝承を象徴した情景。
物語 ・沖縄県

アマミクの島づくり—『中山世鑑』の創世神話

アマミクノシマヅクリ

『中山世鑑』は17世紀に琉球王府が編纂した歴史書です。この記事は、巻一「琉球開闢之事」に記された一つの創世神話を独自に再話しました。沖縄各地の創世伝承や現在の信仰を一つの話にまとめるものではなく、島の成立や王統・身分の歴史的事実を示す資料としても扱いません。

月明かりの海辺の丘で向かい合う二匹の狸の頭領と、灯りを持って集まる狸たちを描いた創作情景画。
物語 ・徳島県

阿波狸合戦と金長

アワタヌキガッセンとキンチョウ

阿波狸合戦は、日開野の金長と津田浦の六右衛門が争う徳島の伝奇です。ここでは『古狸金長義勇珍説』の筋を主な物語とし、二代の弔い合戦が和解に至る別伝を「異聞」として分けて紹介します。写本や後代の記録を一つの正伝とはみなしません。

月と霧に包まれた海で、壱岐の釣り人たちが島で弱っていた百合若を船へ助け上げる幻想的な物語絵。
物語 ・長崎県

壱岐の釣り人と百合若大臣

イキノツリビトトユリワカダイジン

この記事は、上田万年校『舞の本』(1926年)の「百合草若大臣」を底本にした独自再話です。長崎県との接点は、壱岐の浦から出た釣り人が百合若を救う挿話にあります。島の舞台全体を長崎県へ同定するものではありません。釣り人への壱岐・対馬の褒賞も、この一曲で語られる出来事として紹介します。

夜明けの川辺で禊を行う伊邪那岐命のイメージ
神 ・三重県

伊邪那岐命

イザナギノミコト

イザナミとともに国生みくにうみ・神生みかみうみを行う神。黄泉国よみのくにから帰還した後の禊みそぎでは多くの神々かみがみが生まれる。

黄泉国へ続く洞窟を見つめる伊邪那美命のイメージ
神 ・島根県

伊邪那美命

イザナミノミコト

イザナギとともに国生みくにうみ・神生みかみうみを担う女神。火の神を生んで没し、黄泉国よみのくにの物語へつながる。

蒲の穂のそばで傷ついた兎を大穴牟遅神が手当てし、沖には列をなす和迩が見える創作イメージ。
物語 ・鳥取県

因幡の白兎—海を渡った兎と大穴牟遅神

イナバノシロウサギ

通称「因幡の白兎」は、『古事記』上巻では「稲羽の素兎」と書かれます。舞台の稲羽は因幡国に関わる名として注釈されています。既存の大国主神の記事でも兎に触れていますが、本稿では兎の行動と結末を中心に、一話として再話しました。

稲梁の上の餅から白鳥が飛び立ち、山の峰に稲が生じる場面を描いた、伊奈利社逸文をイメージするオリジナル生成イラスト
物語

伊奈利社逸文

イナリシャイツブン

1898年刊『古風土記逸文』上巻に収められた伊奈利社いなりのやしろの条は、餅・白鳥・稲をめぐる縁起を記します。本項目は、その纂訂本文と、原『山城国風土記やましろのくにふどき』の逸文としての注意点を紹介します。

灯籠の光の中、紙障子に映る怪しい影を見つめる平太郎。
物語 ・広島県

稲生平太郎の魔王物語—三次に現れた怪異

イノウヘイタロウノマオウモノガタリ

これは田中貢太郎「魔王物語」の筋です。舞台の備後国三次郡は現在の広島県にあたります。稲生平太郎にまつわる『稲生物怪録』には異本があり、田中作品を江戸期の一つの原本そのものとは扱いません。怪異の出来事は作品世界の語りで、史実の確認ではありません。

月明かりの海辺で、夢の中の旅人が奥行きの分からない岩穴の前に立ち止まる創作イメージ。
物語 ・島根県

猪目洞窟と黄泉の穴

イノメドウクツトヨミノアナ

『出雲国風土記いずものくにふどき』の宇賀郷条には、夢で磯穴の辺りに至った者は死ぬとされ、黄泉之坂・黄泉之穴と呼ばれたという伝承があります。出雲市の猪目洞窟いのめどうくつは、その場所の候補とされる国指定史跡ですが、原典は現代の洞窟名を記しておらず、同一地点と断定はできません。

大穴持命が湯を導き、少彦名命が足跡の残る石のある湯に浸かる情景。
物語 ・愛媛県

伊予の温湯と少彦名命—石に残った足跡

イヨノユトスクナビコナノミコト

『伊予国風土記』は原本が伝わらず、その一部は『釈日本紀』などに逸文として残っています。本稿は『釈日本紀』巻十四が引く「温湯」の一編を、伊予国の温湯をめぐる物語として再話しました。出典が記す「伊予の温湯」を現在の道後温泉の特定地点と同一視する記述や、温泉の効能を現代の医学的事実とする説明は加えていません。

霧の山の峰に鹿が立ち、二つの山道を進む人物が異なる位置に描かれた、伊和大神と播磨国風土記をイメージするオリジナル生成イラスト
土地神 ・兵庫県

伊和大神と『播磨国風土記』

イワノオオカミトハリマノクニフドキ

『播磨国風土記』に記される伊和大神いわのおおかみの国占めを、鹿が峰に立った香山里と、天日槍命あめのひぼこのみことが先着した波加村の二つの地名説話からたどる。

月夜の荒れた家で七年ぶりに向き合う勝四郎と宮木を描いた創作イメージ。
物語

『雨月物語』「浅茅が宿」

ウゲツモノガタリ・アサヂガヤド

「浅茅が宿あさぢがやど」は、上田秋成うえだあきなり『雨月物語うげつものがたり』の一篇です。京へ出た勝四郎は戦乱などで帰郷が遅れ、七年後に妻の宮木と再会します。しかし夜明けには宮木の姿が消え、彼女がすでに亡くなっていたことを知ります。本稿はNDL公開の1926年版に沿った作品の再話です。

夜の山で、西行が崇徳院の霊に歌を捧げ、院の周囲の光が薄れていく、『雨月物語』「白峯」の創作イラスト。
物語 ・香川県

『雨月物語』「白峯」

ウゲツモノガタリ「シラミネ」

「白峯」は、上田秋成が1776年に刊行した『雨月物語』九編の一つです。讃岐の白峯陵を訪ねた西行が、崇徳院の亡霊と対話する怪異譚として構成されています。