月明かりの海辺で、夢の中の旅人が奥行きの分からない岩穴の前に立ち止まる創作イメージ。

物語 ・古典原典

猪目洞窟と黄泉の穴

イノメドウクツトヨミノアナ

『出雲国風土記』出雲郡・宇賀郷条、および現代の文化財情報 島根県

『出雲国風土記』宇賀郷条が語る、夢で近づくと命を落とすという黄泉之坂・黄泉之穴。猪目洞窟との関係を、古典の記述と遺跡の事実に分けて紹介します。

代表的な物語

物語

宇賀郷うかのさとの北の海辺には、松の生えた磯がありました。その磯の西には、高さも幅も六尺ほどの岩穴の入口が開いています。中にはさらに穴が続きますが、誰も奥へ入れず、どれほど深いのかも分かりません。

その磯穴の辺りまで夢の中で行った者は、必ず命を落とすと伝えられていました。人々は古くからこの場所を「黄泉之坂よみのさか」「黄泉之穴よみのあな」と呼びました。

概要

『出雲国風土記いずものくにふどき』の宇賀郷条には、夢で磯穴の辺りに至った者は死ぬとされ、黄泉之坂・黄泉之穴と呼ばれたという伝承があります。出雲市の猪目洞窟いのめどうくつは、その場所の候補とされる国指定史跡ですが、原典は現代の洞窟名を記しておらず、同一地点と断定はできません。

現代語解説

『出雲国風土記』にある話と、現在の猪目洞窟の考古学的情報は、同じ事実として扱えません。文化庁の日本遺産ポータルは、猪目洞窟遺物包含層を出雲市にある国指定史跡として紹介し、弥生時代から古墳時代にかけての人骨や貝の腕輪などが見つかったことを伝えています。また、黄泉の坂の候補地の一つとして取り上げています。

つまり、原典が語るのは宇賀郷の磯窟と、夢でそこへ至ることに結び付いた死の伝承です。猪目洞窟は現代に残る遺跡であり、古典の場所とのつながりは比定・伝承として紹介されています。考古学的な出土物は、黄泉の穴が実在したことを証明する資料としては扱いません。

「黄泉比良坂」の記事では『古事記』の夫婦神の物語を扱います。本記事の宇賀郷の穴と黄泉比良坂は、それぞれ異なる古典の記述です。

登場人物・神について

『出雲国風土記』のこの記述には、名の分かる人物や神は登場しません。夢の中で磯穴の辺りまで行った「人々」について語る伝承であり、特定の体験者や神格を本文から補うことはできません。

深く知る

出典を確かめる

本文中の説明ごとに、根拠となる資料と該当箇所を示します。

伝承

夢に現れる磯の穴

『出雲國風土記』の宇賀郷条は、夢で磯窟の辺りへ行った者は命を落とすとし、「黄泉之坂」「黄泉之穴」と呼んだと記す。
  1. 出雲郡・宇賀郷条『出雲國風土記』全文掲載可/著作権保護期間満了資料(PDM)

史料記録

現代の洞窟遺跡との区別

猪目洞窟遺物包含層は考古学上の遺跡で、猪目洞窟を黄泉之穴の候補とする説明がある。古典の穴と遺跡を同一と確定する記述ではない。
  1. 出雲郡・宇賀郷条『出雲國風土記』全文掲載可/著作権保護期間満了資料(PDM)
  2. 文化財概要・伝承地の候補説明猪目洞窟遺物包含層事実要約可/政府標準利用規約(第2.0版)

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