FOLKLORE ENCYCLOPEDIA
伝承事典
神々、土地神、妖怪、怪異。名と土地、異説と典拠を横断して探す。
64件の異聞

文福茶がま—館林・茂林寺のふしぎな釜
ブンブクチャガマ二つの作品は、どちらも群馬県館林の茂林寺に話を結びますが、狸の出自と寺との関係が違います。代表話は楠山正雄「文福茶がま」、異聞は佐藤垢石「老狸伝」第四・第五節に沿った独立した再話です。寺の現物の由緒や歴史的事実を、物語から確定するものではありません。

松浦佐用姫と領巾振の嶺
マツラサヨヒメ(マツウラサヨヒメ)とヒレフリノミネ松浦佐用姫は、『万葉集』巻五の歌群で、遠ざかる船を領巾で見送る人物として歌われます。一方、『肥前国風土記』松浦郡条では、弟日姫子という名の女性が、狭手彦との別れの後に沼の蛇を追う説話が記されています。二つの作品は主人公の名と展開が異なるため、本稿ではそれぞれの物語として分けて紹介します。

万葉集の真間の手児奈
マンヨウシュウノママノテコナ真間の手児奈は、『万葉集』巻九の高橋連虫麻呂歌集の長歌と反歌に詠まれた娘子です。長歌は質素な装いと美しさ、彼女に言葉をかける人々、湊の奥の墓を歌い、反歌は真間の井を見て手児奈を偲びます。歌に記されない死の理由を補わず、二首が残す姿を紹介します。

耳なし芳一の話
ミミナシホウイチノハナシ「耳なし芳一の話」は、小泉八雲が英語で著した怪談を戸川明三が日本語に訳した作品です。赤間ヶ関で琵琶を奏でる盲目の芳一が、平家の亡霊に招かれ、経文で身を守ろうとして耳を失う筋を描きます。本項目は文学作品の再話であり、壇ノ浦の史実や地域の伝承を直接証明するものではありません。

三輪山の糸—名も知らぬ訪問者の正体
ミワヤマノイト『古事記』中巻の崇神天皇条にある三輪山伝説を一つの筋として再話しました。國學院大學の地名データベースは、文献中の「美和」を現在の奈良県桜井市三輪に結び付けています。これは文献上の地名譚であり、地名の歴史的語源を確定する記録ではありません。

遊佐の小正月行事(アマハゲ)
ユザノコショウガツギョウジアマハゲ山形県遊佐町の女鹿・滝ノ浦・鳥崎に伝わる重要無形民俗文化財。アマハゲを含む固有の小正月行事として、公開範囲に配慮して紹介する。

米川の水かぶり
ヨネカワノミズカブリ宮城県登米市米川に伝わる重要無形民俗文化財。文化庁の公開情報では、火伏せを願う民俗行事として位置付けられている。

黄泉比良坂
ヨモツヒラサカ黄泉比良坂は、『古事記』上巻で伊耶那岐命と伊耶那美命が別れる坂です。伊耶那岐命は千引の石で坂を塞ぎ、死と誕生について二神が言葉を交わします。原典はこの坂を「今、出雲国の伊賦夜坂」と記しますが、神話の地名記述を現在の特定地点の実証と同じ意味には扱いません。

両面宿儺
リョウメンスクナ両面宿儺は、岐阜県飛騨地方に結び付く異形の伝承です。『日本書紀』では二つの顔と二組の手足を持つ人物として討伐され、飛騨の後世資料では開山・守護者に近い像が語られます。前者を史実、後者を同じ事件の裏面と決め付けず、朝廷側の原典層と地域側の信仰伝承を分けて紹介します。

六郷満山と仁聞菩薩—二十八の谷を開いた縁起
ロクゴウマンザントニンモンボサツ六郷満山は国東半島に広がる寺院群の総称です。その開山者として伝えられる仁聞菩薩の物語には複数の縁起があり、成立時期や内容も一様ではありません。本稿では、寛政12年(1800年)の写本として紹介される『六郷満山本縁起』の一説を取り上げます。
