火にかけられた茶釜から狸の姿が現れ、驚く和尚が見守る、文福茶がまの幻想的な物語絵。

物語

文福茶がま—館林・茂林寺のふしぎな釜

ブンブクチャガマ

楠山正雄と佐藤垢石の文学的再話 群馬県

館林の茂林寺を舞台にした文福茶がま。楠山正雄版の踊る釜と、佐藤垢石版の守鶴の話を分けて紹介します。

代表的な物語

物語

館林たてばやしの茂林寺もりんじで、和尚が気に入った茶釜を買ってきました。ある夜、和尚が釜のそばで眠っていると、小僧たちは釜から頭や足、尻尾が現れ、部屋を歩くのを見ます。声を上げて和尚を起こしましたが、和尚が見るころには釜は元の形に戻っていました。小僧たちは信じてもらえません。

翌日、和尚が釜に水を入れて火にかけると、釜は熱さに驚いて飛び出し、狸の姿を見せます。和尚は通りかかったくず屋に釜を売りました。くず屋の家で、釜は自分が狸だと明かします。野原で人に追われて釜に化けたところを拾われ、道具屋を経て寺に運ばれたのです。腹を空かせた釜は、しばらく置いてもらうお礼に芸を見せると言いました。

くず屋が見世物小屋を開くと、手足の生えた釜は綱渡りを披露しました。客は次々に訪れ、くず屋は金を得ます。しかし、くず屋はいつまでも釜を働かせるのをやめようと決めました。もうけた金の半分を添えて茂林寺へ釜を返すと、和尚は受け取りました。その後、釜は踊り出さず、寺の宝物になったといいます。

異聞

守鶴と尽きない湯の釜

旅の和尚が榛名山の麓で守鶴しゅかくという少年僧に出会います。守鶴は弟子にしてほしいと頼み、和尚とともに館林へ来ました。寺を建てたいという和尚を、守鶴は近くの景勝の地へ案内します。近村の人々の協力で寺が建ち、落成祝いに大勢の人が集まると、守鶴は客の茶を受け持ちました。客がいくら増えても釜へ水を足さず、湯を汲み続けます。和尚は不思議に思いながらも、知らぬふりをしていました。

後日、用事のできた和尚が守鶴を呼んでも返事がありません。部屋の襖を開くと、大狸が昼寝をしていました。和尚は静かに襖を閉めます。その夕方、正体を見られたと気付いた守鶴は、自分は榛名山麓の横穴にすむ狸だと明かしました。和尚は引き止めましたが、守鶴は姿を消してしまいます。

和尚は残された釜を守鶴の遺品として大切に使っていました。ところが、ある昼、釜から狸の顔や尻尾、足が生え、畳へ飛び降りて踊り始めます。和尚が釜を古道具屋に譲ると、そこでも夜中に狸の姿を見せました。驚いた店主が知り合いへ売り、その店でも同じことが起きるので、釜は店から店へ渡ります。やがて関わった道具屋たちは相談し、釜の狸踊りを見世物にしました。見物人が集まって大きなもうけとなり、得た福を皆で分け合ったので「分福茶釜」と名付けたといいます。興行を終えた道具屋たちは、釜を茂林寺へ返し、末永く守ってほしいと和尚に頼みました。

概要

二つの作品は、どちらも群馬県館林の茂林寺に話を結びますが、狸の出自と寺との関係が違います。代表話は楠山正雄「文福茶がま」、異聞は佐藤垢石「老狸伝」第四・第五節に沿った独立した再話です。寺の現物の由緒や歴史的事実を、物語から確定するものではありません。

現代語解説

楠山版では、くず屋が釜のために見世物を終え、寺へ返す行動が結末になります。佐藤版では、少年僧守鶴の正体と尽きない湯が話の始まりです。二つの始まりを一つの過去としてつなげないことで、伝わり方の違いが見えます。なお、茶釜の表記も楠山版は「文福」、佐藤版は「分福」です。

登場人物・登場する存在の紹介

楠山正雄の代表話に登場する狸は、茶釜に化け、手足を出して綱渡りをする存在です。和尚は釜を買って寺へ持ち込み、くず屋は釜を引き取って見世物を開き、最後には寺へ返します。

異聞の守鶴しゅかくは、佐藤垢石「老狸伝」に少年僧の姿で登場する狸です。尽きない湯を出す釜の話と結び付けられています。代表話の茶釜に化けた狸とは、出自や寺との関係を一つにまとめません。

深く知る

出典を確かめる

本文中の説明ごとに、根拠となる資料と該当箇所を示します。

伝承

和尚が買った茶釜

楠山版では、茂林寺の和尚が買った茶釜から狸の手足や尾が現れ、後に狸の姿を見せる。
  1. 一文福茶がま全文掲載可/著作権保護期間満了・青空文庫収録

伝承

釜の芸とくず屋

釜の狸は、しばらく置いてもらう礼に芸をすると申し出て、くず屋の見世物で綱渡りをする。
  1. 二文福茶がま全文掲載可/著作権保護期間満了・青空文庫収録

伝承

釜を寺へ返す結末

くず屋は釜を働かせ続けないと決め、もうけの半分を添えて茂林寺へ返す。
  1. 結末文福茶がま全文掲載可/著作権保護期間満了・青空文庫収録

伝承

守鶴と尽きない湯

佐藤版では守鶴が寺の祝いの茶を受け持ち、釜から湯を汲み続ける。
  1. 第四節老狸伝全文掲載可/著作権保護期間満了・青空文庫収録

異説・解釈

二つの作品の違い

二つの作品は狸の出自と寺での出来事が異なり、別々の物語として伝わる。
  1. 一・二・結末文福茶がま全文掲載可/著作権保護期間満了・青空文庫収録
  2. 第四・第五節老狸伝全文掲載可/著作権保護期間満了・青空文庫収録

概要

登場人物・登場する存在の紹介

楠山正雄の代表話に登場する狸は、茶釜に化け、手足を出して綱渡りをする存在です。和尚は釜を買って寺へ持ち込み、くず屋は釜を引き取って見世物を開き、最後には寺へ返します。

異聞の守鶴しゅかくは、佐藤垢石「老狸伝」に少年僧の姿で登場する狸です。尽きない湯を出す釜の話と結び付けられています。代表話の茶釜に化けた狸とは、出自や寺との関係を一つにまとめません。
  1. 一/二/結末/一・二・結末文福茶がま全文掲載可/著作権保護期間満了・青空文庫収録
  2. 第四節/第四・第五節老狸伝全文掲載可/著作権保護期間満了・青空文庫収録

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