活玉依毘売が見守る前で、両親が名の分からぬ男の衣に麻糸を結ぶ場面。

物語 ・古典原典

三輪山の糸—名も知らぬ訪問者の正体

ミワヤマノイト

『古事記』中巻・崇神天皇条 奈良県

活玉依毘売を訪れる男は誰なのか。麻糸をたどって三輪山に至る『古事記』の物語を紹介します。

代表的な物語

物語

活玉依毘売いくたまよりびめのもとへ、夜ごと一人の男が訪れるようになりました。比売は男の名を知らないまま、やがて身ごもります。父母が相手のことを尋ねても、比売に分かるのは、立派な男が毎夜来るということだけでした。

父母は、男の正体を確かめようとします。比売に麻糸を通した針を渡し、男の衣の裾へ刺しておくよう教えました。比売がその通りにして朝を迎えると、糸は戸の小さな穴を抜け、外へ続いていました。父母たちはその糸をたどります。糸が行き着いた先は、三輪山の神の社でした。訪ねてきた男は、その山の神だったのです。

糸巻きに残っていた糸は、わずか三巻でした。その三巻にちなみ、この地を三輪と呼ぶようになったといいます。

それから代が下り、崇神天皇の時代には国に疫病が広がりました。天皇の夢に現れた大物主神は、自分を意富多々泥古おおたたねこに祀らせれば国は穏やかになると告げます。天皇が人を遣わして探すと、意富多々泥古は河内で見つかりました。彼は、かつて活玉依毘売を訪ねた神から続く子孫だと語ります。天皇は意富多々泥古に大物主神を祀らせ、ほかの神々にも供え物をしました。すると疫病は止み、国に平安が訪れたといいます。

概要

『古事記』中巻の崇神天皇条にある三輪山伝説を一つの筋として再話しました。國學院大學の地名データベースは、文献中の「美和」を現在の奈良県桜井市三輪に結び付けています。これは文献上の地名譚であり、地名の歴史的語源を確定する記録ではありません。

登場する神

どのような神なのか、物語での役割や司るものを出典に沿って紹介します。

大物主神おおものぬしのかみ

三輪山に祀られる神です。『古事記』中巻では、活玉依毘売を訪ねる男の正体として明かされます。
出典:古事記現代語譯

現代語解説

『古事記』では、疫病を鎮めるために大物主神おおものぬしのかみを祀る者として意富多々泥古が探し出されます。糸の話は、その意富多々泥古が大物主神の子孫だと語る由緒の中に置かれています。記事では、糸の話と後の祭祀の話の時間差を明示しました。『日本書紀』に見える蛇の姿は、この『古事記』の場面に足していません。

深く知る

出典を確かめる

本文中の説明ごとに、根拠となる資料と該当箇所を示します。

神の説明

大物主神

三輪山に祀られる神です。『古事記』中巻では、活玉依毘売を訪ねる男の正体として明かされます。
  1. 中巻「美和の大物主」・活玉依毘売と糸の物語古事記現代語譯全文掲載可/著作権保護期間満了・青空文庫収録

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