提灯の灯る場面で、東人と二頭の犬が白い毛・赤い顔の猿神に向かう。

物語 ・古典原典

美作の猿神退治—生贄の娘を救った東人

みまさかのさるがみたいじ

美作国の猿神へ娘を捧げる祭り。身代わりを申し出た東人は、二頭の犬と長櫃に身を隠します。『宇治拾遺物語』第119話を原文の筋に沿って紹介します。

代表的な物語

物語

今は昔、山陽道の美作国には中山ちゅうざんと高野こうやという二柱の神がいました。高野は蛇、中山は猿の姿をした神とされ、その祭りでは毎年、人の娘が生贄いけにえに選ばれていました。その年、選ばれた娘の両親のもとへ、狩りをする東国の男がやってきます。事情を聞いた男は、両親の承諾を得て娘の身代わりになると申し出ました。

祭りの日まで、男は山で使い慣らした犬の中から賢い二頭を選び、生きた猿を捕らえて犬に追わせ、猿へ向かうよう繰り返し訓練します。男も太刀や刀を研ぎ備えました。祭りの日、宮司たちが新しい長櫃ながびつを娘の家へ運び、生贄を入れるよう求めると、男は自ら櫃に入り、左右に犬を伏せさせ、研いだ武器も持ち込みました。櫃を閉じて娘が入ったように装うと、長櫃は神社へ運ばれていきます。運び出される様子を聞いた娘は、身代わりになった男に心を寄せ、もし計画が失敗したら両親はどうなるのかと案じました。

神前に櫃が置かれると、男は刀の先で小さな穴を開け、中の様子をうかがいます。そこには、白い毛を逆立て、顔と尻を赤くした大猿が座り、周囲には大勢の猿が並んでいました。大猿が櫃の結びを解いて蓋を開けようとしたとき、男が犬たちに合図します。二頭は飛び出して大猿に食らいつき、男も櫃から出て猿をまな板へ押さえ、刀を首に当てました。

その場で男が人を生贄にするなと迫ると、神主の一人に神が憑き、これからは人の生贄をやめ、選ばれた娘の子孫を守ると申し出ます。東人はすぐには許さず、宮司たちにも二度と生贄を出さないと誓わせてから、大猿を放しました。こうして人の生贄は止まり、男は娘と夫婦になって暮らしたといいます。その後、美作国では猪や鹿が生贄に供えられたとも語られます。

概要

『宇治拾遺物語』第119話は、美作国の猿神へ娘を捧げる祭りを、身代わりを申し出た東人と二頭の犬が止める物語です。結末では人ではなく猪や鹿を供えるようになったと語られます。

登場する神

どのような神なのか、物語での役割や司るものを出典に沿って紹介します。

現代語解説

登場する神・人物の紹介

東人:狩りをする東国の男です。娘の身代わりとなり、二頭の犬とともに猿神へ立ち向かいます。

話の出典と範囲

採用するのは陽明文庫本『宇治拾遺物語』第119話(巻10・第6話)です。『今昔物語集』の猿神譚や、後世の『藤袋草子』などは異なる話なので混ぜません。

伝承として読む

紹介するのは陽明文庫本『宇治拾遺物語』第119話(巻10・第6話)の一話です。生贄の習俗を史実として示す資料とは扱わず、現代の美作国の神社や地域に物語上の神を比定しません。『今昔物語集』や後世の絵巻・地域伝説は混ぜていません。

深く知る

出典を確かめる

本文中の説明ごとに、根拠となる資料と該当箇所を示します。

伝承

中山と高野の神

山陽道の美作国に中山・高野の神がおり、中山は猿、高野は蛇とされる
  1. 第119話・校訂本文冒頭陽明文庫本『宇治拾遺物語』第119話事実要約可/翻刻部分の利用条件を確認(今回は事実の独自要約)

伝承

娘の身代わりを申し出る東人

娘が生贄に選ばれ、東国の男が両親の承諾を得て身代わりを申し出る
  1. 同話・前半陽明文庫本『宇治拾遺物語』第119話事実要約可/翻刻部分の利用条件を確認(今回は事実の独自要約)

伝承

二頭の犬と長櫃の備え

東人は二頭の犬を猿に向かわせる訓練をし、祭りの日に犬と武器を持って長櫃へ入る。娘は身代わりを知り、計画が失敗した場合の両親を案じる
  1. 同話・中盤陽明文庫本『宇治拾遺物語』第119話事実要約可/翻刻部分の利用条件を確認(今回は事実の独自要約)

伝承

猿神との対決

犬と東人が大猿を押さえ、人の生贄を止める誓いを得て解放する
  1. 同話・後半陽明文庫本『宇治拾遺物語』第119話事実要約可/翻刻部分の利用条件を確認(今回は事実の独自要約)

伝承

生贄を止めた結末

以後は人の生贄を止め、東人と娘は夫婦となり、後に猪・鹿が供えられたと結ばれる。本稿は同話に限定
  1. 同話末尾・凡例陽明文庫本『宇治拾遺物語』第119話事実要約可/翻刻部分の利用条件を確認(今回は事実の独自要約)

神の説明

中山の神

美作国にいるとされ、猿の姿をした神です。物語では毎年の祭りで人の娘を生贄として求めます。
  1. 第119話・校訂本文冒頭陽明文庫本『宇治拾遺物語』第119話事実要約可/翻刻部分の利用条件を確認(今回は事実の独自要約)

神の説明

高野の神

蛇の姿をした神です。物語冒頭で中山の神と並んで紹介されますが、猿神退治の場面では前面に出ません。
  1. 第119話・校訂本文冒頭陽明文庫本『宇治拾遺物語』第119話事実要約可/翻刻部分の利用条件を確認(今回は事実の独自要約)

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