物語に登場する伝統的な鉄の釜を描いた、吉備津の釜をイメージするオリジナル生成イラスト

物語 ・近世資料

吉備津の釜

キビツノカマ

近世文学 岡山県

上田秋成『雨月物語』「吉備津の釜」を、岡山に結び付く舞台を持つ近世の怪異小説として、出典とともに紹介します。

代表的な物語

物語

吉備の庭妹里にいせのさとに住む正太郎は、酒と遊びに心を奪われ、父母を心配させていました。両親は彼を落ち着かせようと、吉備津きびつに縁のある家の娘、磯良との縁組を整えます。婚礼に先立って神前に供えた釜は、吉兆なら大きく鳴るとされていました。ところが、その日、釜は静かなままでした。磯良の父は不安を覚えますが、すでに交わした約束を変えることはできないと考え、縁組は取りやめになりません。やがて親族が集い、正太郎と磯良は夫婦になります。

磯良は家を支え、正太郎にも誠実に尽くしました。けれども正太郎は、港町の遊女だった袖との関係を断ち切れません。父は正太郎を叱り、家から出られないようにします。磯良は夫の心を取り戻そうと努めながら、袖のもとにもひそかに物を届けていました。やがて正太郎は、袖を都へ連れて行って身を立てさせるのだと磯良に話し、旅の費用を求めます。磯良はその言葉を信じ、自分の持ち物まで手放して金を用意しました。正太郎は袖とともに去り、残された磯良は深く傷つき、病の末に亡くなります。

都へ向かった正太郎と袖は、途中で播磨はりまに身を寄せます。けれども袖はほどなく病に倒れ、命を落とします。ひとりになった正太郎は、夕方ごとに袖の墓へ通います。そこで見知らぬ女に会い、夫を失った女性を訪ねるよう誘われます。薄暗い家で待っていたのは、故郷に置き去りにした磯良でした。磯良は正太郎に、それまでの行いの報いを知らせると告げます。正太郎は恐れて倒れ、目を覚ますと、そこは家ではなく墓地の堂でした。逃げ帰っても、怨霊はなお彼を追います。

祈祷師は正太郎に、四十二日のあいだ家にこもり、戒めを破らないよう命じました。夜ごと外から声が近づき、戸口や窓には不穏な気配が訪れます。それでも正太郎は戸を閉ざして耐えました。夜が明けるたびに、正太郎は隣人と壁越しに言葉を交わし、次の夜を恐れながら待ちます。長い物忌みの最後の夜、空が明るくなったと思い込んだ正太郎は、隣人に会おうとして戸を開けようとします。けれども夜はまだ明けていませんでした。叫び声のあと、正太郎の姿は消え、残されたのは血の跡と髪だけでした。

概要

上田秋成『雨月物語』に収められた、岡山に結び付く吉備を舞台にした怪異小説。正太郎、磯良、袖をめぐる婚姻と裏切り、怨霊の物語を描く。

現代語解説

本作は、岡山に結び付く吉備や御釜の描写を含みますが、地域の実話・民間伝承を記録したものではありません。上田秋成による近世文学として、作品に描かれた人物と出来事を読みます。

作品中の釜は縁組の吉凶を示す装置として描かれます。このページでは、現在の神事、参拝、占いの手順や意味を説明しません。作品の舞台設定と、現在の地域の営みを同一視しないためです。

登場人物・登場する存在の紹介

正太郎しょうたろうは、「吉備津の釜」で磯良いそらと結婚し、のちに袖そでとともに妻を離れる人物です。

磯良は正太郎の妻で、夫の離別の後に亡くなり、怨霊として物語に関わります。袖は正太郎と行動をともにし、その怨霊の出来事に巻き込まれる女性です。三人は上田秋成の小説の登場人物で、地域の実在人物の記録ではありません。

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本文中の説明ごとに、根拠となる資料と該当箇所を示します。

概要

登場人物・登場する存在の紹介

正太郎しょうたろうは、「吉備津の釜」で磯良いそらと結婚し、のちに袖そでとともに妻を離れる人物です。

磯良は正太郎の妻で、夫の離別の後に亡くなり、怨霊として物語に関わります。袖は正太郎と行動をともにし、その怨霊の出来事に巻き込まれる女性です。三人は上田秋成の小説の登場人物で、地域の実在人物の記録ではありません。
  1. 「吉備津の釜」冒頭〜婚姻/「吉備津の釜」婚姻後〜磯良の死/「吉備津の釜」袖の死〜結末雨月物語全文掲載可/東京大学総合図書館の画像データ等の利用条件(CC BY相当・所蔵表示)

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